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2014年4月22日 (火)

「書庫を建てる」

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著者/松原隆一郎、堀部安嗣、2014年2月発行、新潮社、1900円(税別)

副題は「1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト」

堀部さんの設計したこの書庫は、建築誌で拝見して知ってはいたが、施主が高名な社会学者の松原さんであることは知らなかった。

すっかり高名な建築家となった堀部さんだが、なんと、松原さんからの設計の依頼は4回目であるという。デビュー作として名高い「南の家」「ある町医者の記念館」は親せき筋の依頼であり、それを除いた実質的な最初の設計依頼が松原氏の自宅(リニューアル)であったそうだ。その後、自宅の増築、奥さんの経営するショップの改築、そしてこの書庫である。

堀部さんは、同じ施主からもう一度仕事を依頼されることを建築家としての勲章と考えているそうだ。わたしもそう思う。世の中に無数にいる建築家の中から、再度指名されることはうれしいことであり誇れることである。まして、4回目の仕事を依頼されたのだから建築家冥利に尽きるというものだろう。

松原氏が著者に加わっているということは、本書が単なる建築家の仕事の顛末記ではないことを示していて、なぜ氏が書庫を新築することを決意したのか、松原家の数奇?な過去にさかのぼり、現代の相続をめぐる社会状況まで敷衍した、建築することの行為の意味までを問いかける内容になっている。敷地8坪という狭小住宅が1冊の単行本として刊行されるゆえんでもある。

本来、ひとつひとつの建築の成立にはこれだけの背景があり、現場でのアクシデントやドラマチックな状況が付属しているのだろう。たいせつでやりがいのある仕事であるとおもう。

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