« ふるさとの家/高崎の古民家 | トップページ | Mビル リニューアル 竣工 »

2012年4月17日 (火)

場所原論

2012032864912 「場所原論」隈研吾 著、市ヶ谷出版、2012年1月刊、¥2200

建築界きっての論客、隈さんの新著。

「建築はいかにして場所と接続するか」がサブタイトル。東日本大地震が本書執筆の契機になったとある。大災害は歴史の転換点となる。

近代のスタートはリスボン大地震であるという。1755年である。1666年のロンドン大火はロンドンをレンガの不燃都市につくりかえた。しかし、リスボンの衝撃はそれよりはるかにすさまじかったという。氏の言葉を借りれば、「神への信頼がゆらいだ」のである。それまで、建築は神にささげるものだったのだが、それ以降、強くて合理的な建築が求められるようになったのだ。神に頼らない建築のはじまりである。

合理的であることは科学的であることなので、科学技術が発達する。こうして近代から現代へとつながってきた。このあたりの建築の歴史分析は秀逸だ。19世紀的な空間と構造の分裂をコルビュジェとミ―スは解決する。こうして20世紀建築が世界を席捲し、やがてポストモダンへとつながっていくと論考は続く。さすがは隈さん、ほれぼれするような切れ味のよさで解説してくれる。

本書の後半は隈さんの作品を介して場所と建築の関係を説いている。いくつかのプロジェクトは、小さなユニットを組み合わせて大きな空間を構成するものであり、とてもおもしろいものだった。なかでも「カサ・アンブレラ」はすばらしい。実用できる小さなカサ15個でフラードームばりのドームができあがる。

隈さんは東京大学で内田翔哉先生の研究室にいたそうだ。内田さんは建築生産の専門家であり、いわれてみれば隈さんの追求する設計手法に通じるものがある。

装丁もいい。この端正な表紙は、隈さんの自信と気概を示しているようにも感じる。優秀な人だと聞いてはいたが、あらためてその才能を確認させられた気分だ。

|

« ふるさとの家/高崎の古民家 | トップページ | Mビル リニューアル 竣工 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。