« ルイスカーン | トップページ | 吉阪隆正とル・コルビュジェ »

2012年2月18日 (土)

ウメサオタダオと出あう

2012020663012 編著者:小長谷由紀、2011年12月刊、小学館、1300円+税

梅棹氏は知の巨人、あるいは知のデパートと呼ばれた傑物である。その幅広い卓越した知の世界に魅了された人は多いだろう。わたしもそのひとりである。

もうひとつの特筆される顔として、万博公園にある国立民族学博物館の創設にかかわり、初代館長として長く在籍し活躍した。日本に数ある博物館のなかで、この博物館はとくに秀逸であるとおもう。写真撮影どころか、展示品に触れるのも自由(たしか)である。来館者は自由に手に取り、その用途を実際に試してみることができる。こんなすばらしい発想の博物館はまずない。これも梅棹氏の哲学からきているのだろう。

通称「みんぱく」と呼ばれるこの博物館で、昨年3月から6月までの期間、「ウメサオタダオ展」が開催された。本書はそのときの記録の一部でもあり、著者の小長谷さんは展覧会の担当者である。

「知的生産の技術」の読者なら「京大型カード」のことは知っているだろうとおもうが、わたしも実際にそれらしきカードをつくり、記載して試してみたことがある。その偉大なるカードが「はっけんカード」として展示の一角に来館者へのアンケートとして大量に用意されたそうである。展覧会が終了し、残された多量のカードに書かれた内容をもとに本書は構成されている。

ウメサオタダオにはじめて出あった人、旧知だった人、熱烈なファンだった人、カードの主はそれぞれであり、この展覧会でのウメサオタダオとの出あいの感想や意見をおもいおもいに記している。編著者の小長谷さんはそれをいくつかのカテゴリーに分類し紹介してくれる。

ウメサオタダオの残した、圧倒的な知の蓄積に来館者は驚愕しているようだ。おびただしいカード類、フォルダー、フィールドワークの野帳、とてもひとりの人間が残したとはおもえないほどのボリュームがあったに違いない。ただ、氏の功績はその蓄積にあるのではなく、やはり発信したものの内容にある。

「文明の生態史観」「知的生産の技術」「情報産業論」などなど、大胆かつ先見性にすぐれ、わかりやすい言葉で書かれた数多くの文明論である。そういえば、本書の副題が<文明学者:梅棹忠夫入門>となっていて、氏のことを文明学者と表記している。正鵠を得た表記だとおもう。

インスパイヤーの巨人、ウメサオ氏の生涯にわたる知的な放電は、膨大な知の蓄積・充電からほとばしったものであることを、あらためて知らされる。現在、展覧会は場所を東京の日本科学未来館に場所を変えて開催中であるそうだ。(2月20日まで)

|

« ルイスカーン | トップページ | 吉阪隆正とル・コルビュジェ »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。