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2011年12月 7日 (水)

スギシンポジウム 第10回

宮崎県木材技術利用センター恒例のスギシンポジウムが今年も開催された。例年だと宮崎市開催が多かったが、今回は節目の第10回ということでか、おひざ元の都城市のウエルネスホールが会場であり、楽をさせてもらうことができた。

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記念すべき10回目は、歴代所長の特別講演からはじまる。

まずは初代の大熊先生。創設時の2001年から2003年に所長をつとめられた。講演の内容は木材の集成材のはなし。通常の集成材は断面的には横に細長い材を積層して集成している(仮にヨコ使いとしておく)。樋口先生の研究しているのは縦に細長い断面の材を横方向に集成するもの(縦使いとする)。先生の言葉としては、これを「スギ合わせ材」という名称で呼ぶ。通常のものとは90度方向性が異なっているので、梁成が180ならその構成材も180の成(せい)が必要になる。これまでは小径木を積層することで大径木を上回る安定性と強度をつくりだすことがその目的だったのだろう。かたや、縦使いだとそのメリットが伝わりにくい気がするが、比較的大径木の材料を使用することになるので、森林に豊富にストックされている大径木の有効活用につながることが期待できるだろうし、接着面が横からは見えないので意匠性も高まる。接着剤の使用料も大幅に減らせるなどのメリットがあるようだ。また、同寸のムク材に比較して、集成前の厚板の段階で乾燥できるので、乾燥の効率化にもよい。

基本的に3枚で合わせる構成なので、巾が120だと一枚が40ミリ、105だと35ミリの厚板で構成することとなり、梁成が150~300程度が一般的な寸法であり、厚板寸法35×150、40×300くらいまでの厚板を使用することになる。これだと、他にも転用のきく汎用性の高い厚板であり、一般造作材、床デッキ材、足場板など、他の一般的な用途によく使用される寸法でもある。これが氏の研究の主旨であるようで、厚板市場というものを活性化し、木材の需要増を喚起させたいのが狙いである。北米で主流のツーバイフォー材が日本のホームセンタ-に多く出回っているが、それは住宅の構造材としてだけ買われているわけではない。棚や家具、造作など日曜大工の手ごろな材料として多くの人が購入しているのである。ぜひ、この研究が実りあるものとなることを期待したいとおもう。

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次に、二代目所長の有馬さんによる講演。大熊さんの詳細的な研究発表とは異なり、有馬先生は木材の総合的な見地からの分析報告だった。木質構造の変動の分岐点として、時代を20年ごとに区切り、それぞれ交互に静の時代と動の時代とに区分けする。1,973年がその基点となるのだが、これは伊勢の20年ごとの式年遷宮と一致する。これだと現在は1994年から続く静の時代であり、2014年から動の時代に切り替わることになる。間もなくだ。

木材の総需要、国産率、為替レートと木材価格の相関など、多くのデータが紹介され、それぞれの静と動の時代との関連などを説かれた。興味深い考察である。

このあと、宮崎県で活躍する木材の関係者による事例発表が4件続く。建築家、木材屋さん、行政の方などである。懇意にさせてもらっている串間市のレモン設計の河野さんの発表もあった。また、木都(木材の都の意)都城の中でも有数の木材業者である木脇産業社長の発表もあった。同社はプレカット製材にも先進的に取り組んでいて、都城の材木を製材加工し、九州一円に出荷している会社でもある。

関西方面で手広く住宅をつくっている会社(ゼロコーポレーション)社長の発表もあり、近年、宮崎県のスギを構造材として扱うようになったとのこと。それまでは輸入材が主であったようだ。造作材としてならともかく、構造材には地元の木がいちばんだとおもう。その地域、風土で育った木が住宅の構造材として安定して強度を維持することができる。他の地域で育った材が、温度、湿度などまったく異なる環境下でその性能強度をじゅうぶんに担保できるのか疑問であるからだ。しかし、実質は日本の住宅は輸入材に頼っていて、その主要な原因はコストであるという。節や意匠性なども要因にあるようだが、その点は消費者に説明し、クリアできているとのこと。

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最後はパネルディスカッションで締めることになる。ディスカッションとは討議のはずだが、このようなイベントのパネルディスカスで討議になることはほとんどない。自分の意見を述べるだけで、他人の意見には当たり障りのないコメントで終始するのが常である。

それがいいのか悪いのか判断は難しいところだろうが、聴衆としてはつまらない。今回もその例にもれずというところだったが、時間がおしていて、十分討議する時間がなかったこともある。

長く館長をつとめた有馬所長に代わり、三代目の所長には飯村氏が就任したことを知った。氏はセンター発足時からの研究者であり、それまで三井木材にいた人である。木材のスペシャリストであり、グローバルにかつローカルに木材を語れる優秀な研究者であることは承知している。

できれば、今回のシンポジウムでもっと新所長としての抱負や知見を披歴して欲しかった気がするが、前二代の所長がいたせいか、今回は遠慮がちのようだった。

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