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2011年9月 4日 (日)

日本の建築遺産12選

2011081457762 磯崎新 著、2011年6月、新潮社刊、\1600

あれ、投入堂に「ジャムおじさん」が、とおもったら建築家の磯崎さんだった。

磯崎さんは世界を俯瞰した建築しかつくらないので、いわゆる和風的な作品をつくることはない。氏を貫徹する設計規範であり、尊敬に値する。でも、伊勢や桂など日本の建築にも造詣は深いし、著述も多数あり、日本建築に関しても第一級の語り手である。

そんな氏が選んだ日本の建築12を取り上げた本。もともとは『芸術新潮』誌の2004年6月号の特集をもとにしたものらしい。

その12選がすばらしい。「神を感知する」「柱」など6つの項目を立て、それぞれ「垂直」と「水平」の視点からひとつづつ建築を選ぶ。6×2で12選となる配列。明快かつシンプルにして深い、氏ならではの構成である。

はじまりの「神を感知する」では水平:伊勢神宮と垂直:出雲大社、「フリースタイル」では垂直:三仏寺投入堂、水平:飛雲閣、あたらしいところでは「20世紀日本建築の到達点」として水平:代々木オリンピックプール、垂直:水戸芸術館アートタワーで締めくくる。水戸は自作であるが、その特異な造形は選出を許されるだろうと、わたしは納得する。

この中で自分が実際に見たことがあるのは、伊勢、唐招提寺、三十三間堂、修学院離宮、代々木の5つしかない。出雲も投入堂も、そんな遠くでもないし、昔から見たいとおもっているだけで行っていない、怠慢さを恥じるしかない。とくに投入堂は、急峻な崖地にまさしく投げ入れてあるかのようであり、そこへ行くのも岩肌をよじ登り、たいへんな困難を伴うと聞く。体力があるうちにしか行けない難所だ。そのうちとおもいながらもう50歳になる。でも、写真の磯崎さんは当時でも70歳を超えているだろう、まだ20年は大丈夫かなんておもってはいけない。彼は超人である。行くしかない、と自分を奮い立たせる。

あとがきはことしの3月以降に書かれたようで、東日本大地震にも言及してあった。そのなかから抜粋する「・・・『方丈記』を読めば、当時の京都は今の三陸海岸よりはるかに悲惨でした。ヒロシマ・ナガサキはフクシマ第一の想定外事故を超えています。つまり、日本列島は幾度も壊滅しながら、それでもここでとり挙げたような建造物を保持してきた・・・・」

平和がいちばんに決まっているが、歴史はけっこう残酷です。それでも、日本にこれだけの建物が残されていること、日本人が残すに値する建築を作り続けてきたことは称賛していいだろう。

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