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2010年10月25日 (月)

林檎の礼拝堂

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フランス北西部にある小さな都市に、廃墟と化していた古い礼拝堂があった。それを、美術家の田窪恭次氏がよみがえらせた。約10年もの月日を費やして。その物語を詳細に綴った本。

今まで、この礼拝堂のことはたくさんのメディアに取り上げられているので、知っている人も多いだろう。わたしもそのひとりだったはずだ。でも、それがいかに通り一遍の認識しか持ち得ていなかったことかを思い知らされた。

わたしは、田窪氏が礼拝堂に林檎の絵を作品として描いただけとしかとらえていなかった。この礼拝堂のプロジェクトは、屋根を葺き直し、一部に色ガラスの瓦をはめ、木組フレームを補修し、床にはぶ厚いコルテン鋼が敷き詰められた。総予算2億円という。村人から依頼されたわけではない。政府からの依頼でもない。氏は自分で資金をかき集め、多くの賛同を得てなし遂げられた。10年近くの歳月を、氏と氏の家族はフランスの片田舎で過ごすことになる。つまり、これは単なる作品ではなく、氏と氏の家族の人生において、生活であり作品を超越した行為として存在していた。

正確に言うと、林檎の絵は描かれたものではなく、掻いたものだ。白い壁の下時には、30色に及ぶ絵具が全面に塗り込められている。氏はその絵具の層を専用の掻き道具で削りだしている。なぜそこまでする必要があったのか、周囲は驚愕するしかないが、氏にとってはそうでなくてはならなかったのだろう。美術家の執念というか、人間の表現行動はスゴイ。

いちおうの完成から10年、礼拝堂はどうなっているのだろう。

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