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2010年5月 5日 (水)

建築・都市 ブックガイド

201004114240 五十嵐太郎 著/彰国社/2010.4/2190円

建築批評家・東北大学教授の五十嵐さんの新著。建築書のガイドブックである。本を案内する内容なのでブックガイドでもある。

当然だが、ここに紹介されている百冊を超える本を氏は読んでいるのである。あの博識と明晰な理論はこの読書に裏打ちされている。建築書に限っても、実際にはこの数倍に及ぶ本を、それ以外のジャンルまで含めるとさらにその数倍の本を、氏は読んでいるはずだ。氏は読書家でもあるが、あらゆる展覧会(建築系・美術系・博物系)にも見学に行くという話も聞いた。本書にも出てくるが、映画やマンガも得意な分野であるようで、文化系の巨匠といっていいとおもう。

いい建築をつくるためにはインテリジェンスは欠かせない。施主と良好なコミュニケーションをたもつためにも、莫大な建設資金の使途を託されるにたる資質をたもつためにも、なにをつくりなにが不要であるかを考えるためにも、良質なインテリジェンスなくして良質な関係も建築もなしえない。だから、建築家も本を読む人は多いし、名のある建築家はほとんどインテリである。

世界にごまんとある本、建築書にかぎってもおびただしい数がある。このなかで何を読めばいいのか、それは自分で試行錯誤しながらつかみ取り、感じ取るしかないのだろうが、五十嵐さんもこの本を読んでいたのかと自己満足的な確認ができることもブックガイドのよさだろう。

いまさら、五十嵐さんばりの読書家になろうという気はさらさらないが、本書から教えてもらった気になる本を数冊あげておこう。そのうち読むことになるために。

「伊勢神宮」井上章一 著、講談社、2009。風俗評論家に転向したとおもっていたら、やはり氏の本籍は建築にあるのだろう。これまでにいろんな建築家や評論家が神宮を取り上げている。今回は氏がどんな切り口で伊勢を見せてくれるのか楽しみである。井上さんの論考はおもしろいのと、氏の出身地である京都・嵯峨に若干の地縁があるので、氏の著作は目にとまったものはほとんど読んでいるが、本書のことは知らなかった。どくとくの粘っこい語り口はあまり好きではないのだが、それに比例する粘着力にすぐれた探究心とユニークな視点はすばらしい。

「未完の建築家 フランク・ロイド・ライト」エイダ・ルイーズ・ハクスタブル著、TOTO出版、2007。巨匠ライトの評伝である。天才ライトはたくさんの傑作を各地に残しているが、その人生と私生活もまた天才的にドラマチックだ。どんな困難も乗り越えられるのだと勇気をもらえそうである。

「シャルロット・ペリアン自伝」みすず書房、2009。

「海・建築・日本人」西和夫 著、NHKブックス、2002。

「夢と魅惑の全体主義」井上章一 著、文春新書、2006。たぶん、五十嵐さんも井上章一がお気に入りなのだろう。

「漢字と建築」磯崎新+岡崎乾二郎 著、INAX出版、2003。五十嵐さんも、磯崎のことは高く評価しているようで、本書に登場する磯崎ものは数多い。磯崎さんが建築家には希有な多数の著作を出していることもあるのだろうが、まさしく、氏が日本の建築界を論説の点でもけん引してきたことは間違いないようだ。

「コラージュ・シティ」コーリン・ロウ+フレッド・コッター 著、鹿島出版会、新装版2009。

「都市のかなしみ」鈴木博之 著、中央公論新社、2003。

「増補 皇居前広場」原 武史 著、ちくま学芸文庫、2007。

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