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2009年8月17日 (月)

南九州大学訪問

高鍋から移転し、都城市にことし開学した南九州大学都城キャンパスを訪れた。商工会議所の工業部会の視察である。友人の縁で加入した商工会議所には部会制というものがあり、設計事務所は工業部会に配属になるようだ。

たしかに、建築というと工業というジャンルにくくられがちであり、実際に工業高校に建築科があるし、大学の建築科も工学部にある。しかし、なにもない敷地にマルでも三角でも四角でもなんでもいいカタチをどうするのか決める作業にはじまり、この設計が人類にどう貢献するのか、現在の社会の容れものとしての建築を考えだしたとき、あるいは、こまごまとした使い勝手やひとつひとつの諸仕様の決定など、その内容は工学部の範疇におさまるものではなく、哲学から経営学、運動生理学などなどその判断基準は多様そのものである。いっぽう、建築は美しくなければならず、美学的な要素も建築には欠かせない、そんなわけで芸術系の大学にも建築科があるし、芸術工科大学のように、両者を融合させたものとしての建築を考える学校もある。

ほんらいは工学部でもなく芸術学部でもなく建築学部とするのが正解なのだろうが、それはさておき、今回の視察のテーマは農業である。毎年、いろんな企業や研究施設を見学できるこの視察研修には欠かさず参加するようにしている。有益な研修なので工業部会でも農業でもなんでもよい。

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これが完成まじかの新研究棟だ。設計は岡田新一氏。建築界の重鎮のひとりであり、最高裁判所のコンペで衝撃のデビューを果たしてからはや35年。以来、全国にたくさんの建築を残している。また、すったもんだのすえ、この大学が借りるかたちで保存が決まった都城市民会館に関して、大学側に会館を借りて使うように進言してくれた建築家としても名前を聞いたところであり、わたしとって重要な恩人のひとりということにもなる。

わたしが以前京都に住んでいたころ、御所近くの丸太町・寺町をちょっと下がったところにオシャレな事務所ビルが建設されたが、それも岡田氏の設計だった。氏の特徴である石貼りの秀麗さを見せつけた建築だったが、バブルの真っ盛りでもあり、それの象徴でもあった。宮崎県では宮崎市に県立の美術館をつくっているし、その近くの南九州短期大学のキャンパスも同氏の設計だそうで、美術館は得意の石貼りだが、さすがにキャンパスの方は予算的なこともあり豪華な石貼り建築とはいかないようだ。

新しい研究棟は最上階に展望所があり、都城市街をパノラマ化できるそうだが、残念ながらまだ工事中なのでそちらはおあずけ。本来の目的である園芸学部の研究施設の見学に向かう。

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この大学の敷地は、かつての産経大学の跡地だった。数年前にそこが撤退してから、久しぶりの大学復活である。この温室が建ち並ぶ農場は、かつての大学の運動グラウンドだったところだ。そこを掘り返して盛土し実習農場となり、敷地の半分くらいはガラスの温室が建ち並んでいる。

温室とは南北を長軸に建てるものだそうで、その方が太陽光の効率がいいらしい。一般の住宅とは90度ずれた配置となる。わたしも設計者のはしくれとはいえ、温室はやったことがないので知らなかった。一方、中央の写真のように、スリークォーターと呼ばれる4分の3的な屋根の掛け方をすると、ムラなく太陽光を取りこむことができ、温室を東西に建てられるそうで、野球の投手の投げ方くらいでしか聞いたことのない言葉を教えてもらった。

案内役の教授についてまわっている学生氏に聞いてみたところ、出身は三重県とのこと。よくぞ都城に来てくれた。しっかり勉強して大いに遊んでほしい。農業・園芸分野はこれからの時代のメインストリームとなるに違いない。どんなにハイテク化しようが、人間はまず食べることからしかはじまらないからだ。

このキャンパスも温室の風景も数年後はすっかり地域になじんだものになるだろう。これまでのいきさつはさておき、できたからには地域に定着し活性化してほしいものだ。さいごに、大学の担当者に都城市民会館のことも聞いてみたが、新研究棟の建設と新学部の申請で手いっぱいのようすで、いまはそれどころではない的なニュアンス。会館の改修あるいは再使用については手つかずであり、まだ先のようだ。

建築家の先輩からは、保存運動にかかわった人間として、もっと会館の今後について積極的にかかわれよとの叱責・アドバイスもいただいたところであるが、たしかに、対処法的にバタバタ動いてもしかたがないし効果もないことは経験済みだ。でも何ができるだろう。

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