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2009年6月19日 (金)

山之口の人形浄瑠璃

合併でいまは都城市となっているが、都城市の中心街から269号線を30分程北東に走ったところに山之口町がある。

ここはかつての旧薩摩藩と伊藤藩との境となる要衝の地であり、殿様が参勤交代にも通る重要な街道筋でもあった。

道中の殿様を楽しませるためとのいわれもあるが、ここには人形浄瑠璃が保存されていて、なんでも文弥節とかいう全国でも数例しかないふるい形式であるとして、国の重要無形民俗文化財にも指定されている。

日本には民俗芸能として全国に人形浄瑠璃や文楽などがあり、九州だと熊本県の山中にある清和村の文楽が名高い。ここは、その文楽を足掛かりに町おこしをすすめていて、文楽村という劇場や博物館、食堂などを内包する観光施設をもち、木島さんが設計したユニークな建築群がある。

その清和村の規模には及ばないが、山之口町も十数年前なつかしの「ふるさと創生資金」を活用して「人形の館」を建設した。

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2枚目の写真が浄瑠璃を上演する会場となる座敷である。現在でも年に4回公演がおこなわれ、数十人から百人を超える観客を集めるという。右側の写真は舞台右袖の弁士席であり、ここに三味線と語りを担当する人が座るそうだ。

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劇場とは別棟となった資料館にはたくさんのふるい人形が展示されている。いずれも村人の手による素朴なものだが、現在使用している新しいものよりもいい表情があるそうで、たまに公演で使用されることもあるそうだ。現在使用している人形は、専門の業者から購入するそうだが、一体が数十万円とのこと。

ここの人形はひとりで一体を扱う形式のものだが、これが発展して文楽では人形一体を3人がかりで動かすまでに進化している。

資料館には人形を操作できるコーナーがあり、着物の割れた背中から片手を入れ、首から下に伸びた木の棒を手に持つ。その手で片方の腕につながる棒を同時にあやつり、もう一方の手で片手を操作するようになっていた。

右端の写真はこの浄瑠璃の基本演目のひとつである「出世景清」の一場面を再現したものだ。平景清は名の通った武者だが、壇ノ浦で源氏に敗れ落ちていく。この場面は、その後の潜伏先の京都で情人の女性に裏切られ、囚われたところへその女性と子どもたちが訪れる名場面だ。子どもたちのために、わざと冷たくあしらう景清だが、激昂した女性は子どもを道連れに死んでしまう。そこへ、その女性を裏切らせた兄がやってきて、景清に殺されるという凄惨な段であるようで、近松らしい人情の機微にふれる卓越したシナリオとなっていて一世を風靡した。

その余勢がはるか江戸時代に、ここ南九州にまで及んでいるのだが、山之口では麓という薩摩藩の武家集落にそれが根付いた。殿様をもてなすためという名分はあるにしても、こういう芸能ごとが好きだったのだろう。先ほど、村人の手作りみたいなことを書いたが、ここでいう村人は武士階級の人たちである。もっとも、薩摩藩の場合は郷士として半分農民のような生活をしていた武士が多数いたわけなので、そう農民とかわらないのかもしれない。

話は飛ぶが、この平景清という人は宮崎県と縁の深い人物であり、宮崎市には景清廟があり、ここで亡くなったという伝説がある。なんでも、頼朝によって打ち首になった景清だが、観音様が身代わりとなって復活し、それを見て恐れをなした頼朝に許され、宮崎県まで来たのだという。また、宮崎市に生目という地区があり春先はホークスのキャンプ地としてにぎわっているが、ここの生目神社は景清の目にちなんだ神社であり、頼朝への復讐をあきらめるために景清が自分の生き目をえぐって放り投げたものを祀っているという。この山之口にも景清伝説は及んでいて、この館の近くにも景清のいわれがいくつか残されているそうだ。だから、この館が景清ものを得意な演目にしているのはふさわしい。

この人形浄瑠璃は現在でも麓集落の人たちだけで伝承されているそうだ。昭和の一時期すたれたこともあったが、戦後になって再興されたそうだが、けっこう排他的というか保守的なところもあるのだろうし、そこにはかつての武士階級としてのプライドもあるにちがいない。それで人数が確保できるのならそれもいいだろうし、新たな人材を広く募ることも悪くない。いづれにしろ、こういう貴重な文化をたいせつに守り育ててほしいものだ。

この6月21日には定期公演があります。開園は午後2時。演目は「出世景清」のうち、拷問の段、牢舎の段などです。料金はおとな710円、高校生510円、小中学生310円です。

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