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2009年5月29日 (金)

S氏コレクション展

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鹿児島市在住の美術コレクターS氏が、都城市立美術館に寄贈した現代美術作品46点の展覧会だそうだ。

美術館の受付で聞いてみる。Sさんて都城出身なんですか?「いいえ、違うとおもいます」じゃあ、なぜ都城市に?なにかご縁でも?「さあー」

会場内にこの展覧会のことを記した新聞記事が置いてあった。それによると、都城市立美術館は、南九州にゆかりのある現代美術作家に焦点をあてた「メッセージ・・」展なる催しを10年おきに開催していて、それを見たS氏が都城市への寄贈を決めたようだ。

現代美術にかける当美術館の学芸員・ハラダさんの熱意が呼び込んだ寄贈といっていいかもしれない。ハラダさんは建築にも造詣の深い人であり、いつか建築系の展覧会も企画したという考えがあるようであり、楽しみである。

昨年の山内多門展を企画・担当したトミサコさんといい、ふたりしかいない美術館の学芸員はとても美術に対して情熱がある。わたしはこの美術館というよりも、ここの学芸員を高く評価している。地方にあって、地方のハンデと存在意義をよく理解した人たちだとおもうのである。

さて、前置きはおいといて、コレクションにいこう。46点のコレクションは合計26人の作家で構成されている。ルオー、エルンスト、ムーア、草間彌生、浜田知明、菅井汲、などわたしも知る有名どころもあるし、なじみのない作家もいる。しかし、すべてがS氏のメガネにかなった逸品ぞろいだ。自腹で買うからこその真剣な弛緩のないコレクションになっている。総じてどちらかというと存命の(若い?)作家が多い。対象が現代美術だから当然かもしれないが。

その数ある作品のなかで、もっともうれしかったのは野田哲也があったことだ。それも3点も。ついさいきん、東京の恩人であり、敬愛する建築家である兼松さんのブログを覗いていたら、この人の作品を紹介した記事があり、べた褒めだった。はじめて聞くこの作家のことが気になって、ネットで検索してたくさんの作品を見たばかりだったからだ。このひとの作品は「日記1997年8月17日」のように、「日記」と日付だけがタイトルになっている。もともとは「絵日記」だったのだが、「絵」がとれたそうだ。

こうして、ネットでたくさんの「日記」作品を見たのだが、モニター画面だと実際の大きさも質感もつかめないし、お手軽だからいいかげんにしか見ない。写真集のように紙の媒体のほうがまだましだが、やはり実物を見るにこしたことはない。おかげでぜんぜん記憶にのこらないでいたところ、3点も実物で見る機会が訪れたのであった。作品を見て、すぐ兼松さんのこととネットで探索したことをおもいだした。氏の事務所か自宅だかに掛けてある絵は「桃」だったが、この会場にあるのは洋梨とメロンと草花だった。洋梨だけが淡い彩色付きであり、他はモノクロだったが、どれも端正かつ凛気を備えた作品であり、兼松さんが愛し、世界が高く評価する理由がちょっとだけわかったような気がしたが、作品は解る必要なんかなく、その人と作品との縁、見る人の眼力による好き嫌いでじゅうぶんであり、わたしはこの絵と作家が好きになった。

展覧会をじっくり見て、家にかえってさっそく担当のハラダさんに電話し「すごいコレクションですね。ハラダさんのおかげで都城にたいへんなお宝が来ましたね」とねぎらいの言葉をかけたら、「いやあ、なかなか理解してくれる人がいなくてね、ブログに書いといてください」とのこと。だから書いておく。

都城の恩人かつ建築家の中岡さんも、この展覧会を絶賛し、自身のブログに「常設にするべきだ」と強調している。とりあえず、6月21日まで開催されています。もちろん、入場料は無料です。タダで見せるには惜しいくらいの展覧会です。ぜひ美術館へ足を運んで感激の言葉を伝えましょう。気分をよくしたハラダさんは、調子に乗ってますますいい仕事をし、社会に貢献するでしょう。

追記 5月31日にコレクションについてのワークショップが開催されます。(要申込)

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