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2009年5月14日 (木)

反骨・とんこつ

キヨシローが亡くなってから、ユーチューブでキヨシローとRCサクセションの動画を見続けた。数日間、片っぱし、繰り返し見つづけた。そんなに大ファンということもなかったのだが、今さらながら、その楽曲の楽しさと存在感の大きさを感じた。世の中が小さく小さくなっているような気がする昨今、あらためてキヨシローの自由と大きさが惜しいと痛切に感じる。

ユーチューブにはRCの初期のころの動画もあって、よくこんなのがあったもんだと感心する。ビートルズのようにマシュマロカットのキヨシローが、あの特徴のある声で唸り、ギターをかきむしる。ギターはエレキではなくアコースティックだ。

画面で見るキヨシローは鳥ガラのように痩せて小さい。しかし、精神の強さや大きさは体格には比例しない。ステージの上のキヨシローは大きく、なによりカッコよかった。「君が代」は、わたしは聴くものだと決めているので歌わないのだが、キヨシローの「君が代」なら唄ってもいいなとおもった。「タイマーズ」なんていまの小さな社会ではおそろしい歌詞だし、さすがに「やりてえ」はうちの子どもには聞かせられなかった。

こうして、あんまりキヨシローばかり聴き続けたので、すっかり髪の毛が逆立っちまった。酒を飲んだくれてガンガン一晩中聞いていたら、奥さんが怒り狂って家の中をめちゃくちゃにしちまった。そんなことナイアイアイ。

鳥ガラのようなキヨシローを見つづけ、反骨と素直な精神をあらためて大事にしたいと感じつつ、とんこつラーメンを食べてキヨシローウイークを締めた。

さて、建築の世界でもっとも反骨精神にあふれているのはだれだろう。アンドーだろうか、それとも磯崎だろうか。建築家やクリエイティブな仕事をする人には反骨精神は必須だろうが、ここでは石山修武(いしやまおさむ)を挙げておこう。

200905142757 200905112720 「住宅特集」1986年10月号より

これは石山修武が設計し、建築主が自分で建てたセルフビルドの家であり「開拓者の家」という名がついている。わたしは建築を学び始めた学生時代に、この写真をみて衝撃を受けた。こんな建築と建築家もあるのだという驚愕におののきながら、ページをめくり食い入るように写真を見つめ、建築の自由に歓喜し、菅平高原で野菜をつくっていた正橋青年が、石山修武と12年もの歳月をかけてつくりつづけた家づくりの物語をつづったテキストを読んだ。

この家は、土木の現場でよくつかわれるコルゲートパイプという防腐性の高い鉄製の資材をごろんと転がして内外に手を加えたもので、豊橋にある川合健二の自邸(通称ドラムカンの家)がそのオリジナルである。この川合邸の方はdocomomo ジャパンの選定建築物にもなっている。石山氏は川合氏に師事していたことがあり、川合邸をなにかの雑誌で見てあこがれた正橋青年が、川合氏にコンタクトをとったところ、自分は建築家ではないからということで、かわりに石山氏を紹介されたことが発端だったようだ。

川合氏は丹下健三とも協働したことのある優秀な技術者だ。設備やエネルギーが専門分野であり、ドラムカンの家にも独自のエネルギー理論が込められているという。また、この家の形態は、地面に転がっているだけだから建築物ではなく、固定資産税がかからないという理由もあるらしい。たしかに建築基準法では「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱もしくは壁を有するもの」と建築物のことを定義しているので、これでは建築物にはあたらない。しかし、いつのまにかお上は、この条文に(これに類する構造のもの)とカッコ書きを付け加えてしまったので、現在はドラムカンの家も課税されるだろう。お上の収入にひびく反骨精神は、すぐに骨抜きにされてしまう運命にある。

まだ工事中のある年の冬、正橋青年が結婚式を挙げた日の夜、宴の席で石山修武は都はるみの「北の宿」をうたったそうだ。「あなたー♪変わりはないですか・・」すると列席者のひとりから「おまえ正橋に変な家をつくらせておいて、あなた変わりはないですか・・はないだろう、反省しろ!」と詰め寄られたという。

もっとも、ギャラリーに罵声を浴びせられることはこの建築家にとって珍しいことではなく、建築主の家族からもときに投げつけられたりする。施主の期待に添うべく、ユニークな家をつくったはいいが、いまどきの家を好む女房や、彼女に従属する子どもからは敵意を持たれ、罵声とともに石を投げつけられたことがあると何かの本で読んだ。今やベテラン建築家として名をなした石山氏だが、こんな履歴もある。

施主の奥さんや子どもに石を投げられたらつらいだろうな。わたしにはとてもできそにないあいあい。だから、わたしには反骨よりとんこつの方が似合う。もちろん、鶏がらベースのしょうゆ味も好きだが。

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