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2009年3月 4日 (水)

鳩山大臣を応援します

酩酊麻生内閣のなかで、ひとり気炎をあげている鳩山総務大臣が、東京中央郵便局の保存を主張している。オイオイ、いまさら遅いじゃん、と言いたくもなるが、言っていることはしごくまっとうなことである。高い手数料を取りながら、アネハ偽装を見逃したボンクラ役人というか役所が敗訴した先日の裁判に続いて、おおいに共感できるニュースである。

なんでも、切手収集のため、よく兄弟でこの郵便局に買いに来ていたそうで、東京駅前に切手を買いに来るなんて、どこに住んでいたのかと(五十市駅前郵便局に切手を買いに行っていた当方としては)突っ込みを入れたくなる気持ちは抑えて、あなたの言っていることは正しい。「誰がこんなことしたんだ」と郵便局に着くなり叫んでいたが、わたしもそうおもった。ビル計画があることは知っていたが、まさか一部解体まで進行しているとは思わなかった。

東京中央郵便局はdocomomoの選定している建築物であり、ニュースでいう重要文化財「級」の建築であることは疑いがない。なぜ貴重な文化遺産が壊されなければならないのか。対して、日本郵政の西川社長は、「わたしどもは登録文化財を望んでいるわけではない」なんてコメントを出し、文化をパトロネ-ジする経済人らしからぬ、政治家以下のコメントを出す始末だ。ほんとうはこの建物を残すことの意義を優秀な経済人である氏が知らないはずがないが、社長となって唯一の心躍るビッグプロジェクトを推進したい西川氏の心情は理解できる。

「お金で買えないものが文化じゃないですか」と大臣は述べた。そのとおりであるし、文化は収益事業ではないから行政が担当するのであり、役人は高い給料と引き換えに文化的資質を要求され、金持ちはその責任として文化を擁護しなければならない。

「世論の動向にゆだねます」とも述べた。ここはもう少し踏みこんで、「絶対に壊させない」と言って欲しかったし、もっとはやく問題視してほしかった。総務大臣といえば郵政を所管するトップであり、民営化したとはいえまだ全株式を国が握っているのであれば、実質的なオ-ナ-に相当するだろう。大臣の権限はそんなにたいしたものではないのだろうか。民間会社のオ-ナ-なら、絶対的な権限があり、意に反した決定はありえないはずだが。

もっとも、オ-ナ-とはいえ、大臣や首長の場合は期間限定の代行にすぎないわけで、総務大臣が交代し、解体に理解を示す大臣になったら元の木阿弥となるだろうから、最終的に決定するのは本来のオ-ナ-である国民であり市民であり、「世論にゆだねる」しかない。

日本唯一の近代建築に関する専門機関であるDOCOMOMO Japanは、民営化後の東京・大阪の両中央郵便局の行く末を問題視し、超党派の国会議員による見学会や建物の「重要文化財」指定を視野に入れた活動を展開していた。しかし、日本郵政側は、周到な準備を重ねて、超高層オフィスへの建て替え(一部ファサ-ドだけの保存)案を推進していたのだ。ファサ-ド保存でいいではないかという人もいるだろうが、それは着せ替え人形のように表層だけをまとったまったく別の建物であり、新築される新しいビルにとっても、旧ビルにとっても、とても痛々しい不幸な姿をさらすだけだ。現状保存を100点とすれば、それはけして50点ではなく、限りなく0点に近いものでしかない。

いっぽう、民営化した企業が営利を追求するのは当然であり、年間100億円もの収益を見こめる超高層ビルへの建て替えを擁護する意見もあろう。ましてここは東京駅前の超一等地だ。しかし、超一等地であるからこそ歴史的な景観は重要だし、事業にはリスクが付きまとう。今回のプロジェクトは1000億円もの資金が投下される。莫大な利益をあげる巨大金融機関である郵政にとって、社運を賭けるほどの投資ではないかもしれないが、リスクのコントロ-ルは必須だ。

そこで、建て替えずとも収益があがるロ-リスクないい投資法がある。東京都心のような高度に集積された商業地では、容積率の売買が法的に可能な地域がある。そうすることで、低層な建物の上空に本来建てられるはずの容積を、他の同じ区域内の敷地に付与し、低層ビルの保存を支援しようという制度だ。

容積率というのは、建物の延べ床面積を敷地面積で除した数値のことであり、たとえば容積率1000%とは、敷地面積の10倍までの床面積の建物をつくることができるという意味だ。敷地いっぱいにつくると、10階建てまで可能ということになる。

かりに、この郵便局の敷地を1万㎡とし、建蔽率(敷地面積に対する建築面積の割合)を70%と仮定すると、外観からは総5階建てと推測されるので、70×5=350%の容積率となる。この敷地は都心なのでかなりの法定容積率があるだろうが、よく知らないので仮に2000%としておく。そうすると、2000-350ということになり、1650%ぶんの容積をこの建物は余していることになる。敷地が1万㎡(仮定)なので1650%は16万5000㎡ということになる。現在計画中の新ビルの延べ床面積が21万5000㎡なので、ほぼ実情に近い推定だと考えていいだろう。

郵政がこのビルを1000億円で建てて年間100億円の利益を得る。かたや、まったく投資せずに16万㎡もの容積の権利を売る又は賃貸する。いったい、どれくらいの賃料が見こめるのか、あるいは取引されるのか、都会での実例にうといわたしには判断がつかないが、仮に賃貸で坪5万円が相場なら、容積の権利がその1/10として5千円。16.5万㎡は5万坪に相当するので、5万×5千円×12ヶ月となり、年間30億円となる。机上のカラ計算にすぎないが、1000億円の投資に対して100億円の利益、かたや投資額ゼロで容積権の賃貸で30億円の利益があれば、じゅうぶん検討に値する。

文化は金では買えないものなのだから、こんな経済の計算をしなくとも、国が残すと表明し、きちんと手続きを踏んで残せばよい。必要なら郵政から買い取ってもいい。その資金は郵政の株式売却や先述の容積権転売などいくらでも手法は見いだせるだろう。ようはその気があるかないかの問題だ。このさい、鳩山大臣にはおおいに文化財としての価値と必要性をアピ-ルして欲しい。「世論にしたがう」などト-ンを下げずに、保存一辺倒で大いに気炎を上げ世論を喚起して欲しい。そして、文化は金では買えないが、たいへん重要であるというあたりまえのことを言い続けて欲しい。建築の学者はみな残せと言っている。判断がつかないときは学者にしたがえばいい。

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