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2009年2月 5日 (木)

「在日の恋人」高嶺格

2009012923702 河出書房新社、2008年12月、1500円+税

美術作家 高嶺格さんの本。表紙写真の左側の人が高嶺さん、右がその恋人のKさんだろう。たぶん、結婚式のときの後姿だろうと本文から推測する。本書にこの結婚式の記述があり、美術作家らしいユニ-クなもので、かつ高嶺さんらしい誠実・豪快なものだったことがわかる。

「在日の恋人」は、直接的には高嶺さんの恋人のことを示しているが、「京都ビエンナ-レ2003」に高嶺さんが出品したときの作品タイトルのことでもあり、本書ではむしろそちらの記述がボリュ-ム的にはメインであり、展示会場かつ制作場となった京都市京北町にある丹波マンガン記念館でのことが縷縷語られる。そしておもしろい。

「在日」にしろ「マンガン記念館」にしろ、高嶺さんらしいとてもヘビ-な取っ掛かりなのだろうが、やはり高嶺さんらしい独特の視点で、それを美術という自由な手法で分解し再構築しカタチにして提示してくれている。美術家とはエライと感心するが、その苦労もたいへんなものがある。

本書にこんな記述があった。《たとえば在日韓国人に、ワ-ルドカップで日本と韓国チ-ムのどちらを応援するか?という質問をしてみるといい。・・・・略・・・ その種の能天気な質問に対して、彼らは辟易している。・・・・》 2002年の日韓大会のとき、スペイン対韓国戦の翌日、在日の知人に対して、わたしは「勝利おめでとう、よかったね」と言ったのだったが、能天気な自分をおもい知る。

こんな記述もある。《在日は、もともと「国益」という概念から自由だ。自分が益すべきところの単位を、悠々と保留しておける。そしてその着地点はと言うと、おそらく,国よりもスケ-ルの大きいものになるに違いない。野蛮な領地争いによって野蛮に引かれた国境線なんかを信じることがない。そのスケ-ルの大きさこそが、在日の持つアドヴァンテ-ジなのだ。》 う-ん、カッコイイ。

高嶺さんにとってのもうひとつの「在日の恋人」であり、最大のおもいでの場となったマンガン記念館は、ことし閉館されることになったそうだ。京都から福井にいたる周山街道沿いの山中にあるらしいが、わたしは行った事がない。さっそくネットで調べるとすぐにいろんな画像や記事が出てきて行ったような、わかったような気になってしまう。便利なのはいいが、だんだん人間が浅くなっているような気もする。

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