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2008年8月 3日 (日)

京間・キョウマ=狭間?

都城に帰ってきてもう14年になりました。月日のたつのは早すぎます。

こちらで仕事をするにあたって、さいしょにとまどったのが「キョウマ」という言葉です。キョウマというのは、「京間」のことなのですが、おもに京都を中心に西日本・関西地方に多い建築のモジュ-ル寸法のことで、「関西間」と表記されることもあります。日本の住宅は1間又は半間を基本とするグリッド寸法で構成されることがほとんどですが、「京間」「関東間」「中間間」など、地方によってその寸法が異なります。同じ地方でも、建築主や設計者の好み・敷地条件により、関東間、京間を使い分けたりしますので、一定ではありません。

このように、日本には多彩なモジュ-ル文化が花開いており、これを高度な建築文明として評価することもできますが、おかげで、アルミサッシをはじめとして、カ-ペット・畳・カ-テンなど、部屋を構成するほとんどのものに多彩なサイズを用意しなければならないという不都合も生じていますので、一概にこのことがいいとも言いきれませんが、ウンチク好きな人にとっては、好都合なシステムです。

このなかで、いちばん広いのは「京間」で、955ミリプラスアルファを基本寸法としています。次が「中間間」で、これは九州だと「九州間」、名古屋地方では「中京間」とも呼ばれ、同じ955を基本寸法としますが、こちらは柱芯又は壁芯を955(950にする場合もある)の倍数で構成しますので、部屋の広さは「京間」に劣ります。さらに、「関東間」になると壁芯で910を基本としますので、かなり狭くなり面積では「京間」の8割ほどにしかなりません。さらに、「団地サイズ」なるものがあり、これはキリをよくするためか、900を基本とし、コンクリート造の場合は厚い壁に囲まれて正味の実面積はさらに狭くなります。

さいきんでは、「メ-トル間」というのもあり、これは1メ-トルつまり1000ミリを基本寸法にしますので、「京間」とほぼ似かよった寸法になります。たとえば、京間で3帖の部屋だと、短辺方向は1910ミリプラス柱寸120として2030ミリ、長辺方向は955×3に120を加えて2985ミリという寸法になり、6帖だと同じ計算をして2985ミリ×3940ミリあるいは、柱を3.5寸にしますと、2970ミリ×3925ミリとなります。さきほど、「京間」がいちばん広いといいましたが、部分的には「メ-トル間」の方が広くなります。しかし、あまり一般的なモジュ-ルとはいえませんので、ほぼ同じだと覚えておけばいいでしょう。

ただ、「京間」は畳一枚の寸法を6尺3寸×3尺1寸5分に固定していますので、畳の大きさはすべて同じです。部屋を違えても畳は共用できます。(厳密には部屋によって、微妙に直角が狂っていたりすることもあるので、ピタリと納まるわけではありません)しかし、他のモジュ-ルである「中間間」「関東間」「団地サイズ」などでは、部屋の大きさにより畳一枚の寸法は異なり、部屋が広いほど、微妙に畳も大きくなります。壁芯を基本としているからです。このように、壁あるいは柱芯にてグリッドを構成する手法をシングルグリッドといいます。一方、「京間」の場合は、正味の実寸法を基本単位とし、それに柱寸法をたしていきますので、こちらはダブルグリッドといいます。ぱっと見は「京間」の方が複雑に見えるかもしれませんが、面積を柱芯・壁芯で計算すること以外は、非常にシンプル単純明快なシステムです。ついでに言いますと、かつての日本家屋は、内法高さ(障子の敷居から鴨居までの高さ)も5尺7寸か8寸かで統一されていましたので、「京間」の場合は平面と高さが統一されていて、畳はもちろん、障子や襖までがモジュ-ル化・共通化されていました。他の家から畳や襖をもってきても、ピタリと納まるわけです。これは、京間の偉大なシステムとして称賛されてしかるべきものです。現在のエコロジ-思想にもかなっています。

さて、ここまでは学校で教わる話であり、建築の教育を受けた人なら、地域に関係なく共通の理解事項であるはずです。

ここからが本論です。10年以上前、都城のある大工さんと話をしていて、「キョウマ」という言葉が会話に出てきました。わたしは「京間」という意味で理解したのですが、なにやら話がかみ合いませんでした。それどころか、今かんがえると、「こいつはなにも知らない設計屋だな」という蔑視の目線が含まれていたようです。このような経験を数回踏まえ、ようやくその謎が解けました。ここ都城を含む南九州地域では、わたしの知っている「関東間」つまり、狭い部屋のモジュ-ルのことを「キョウマ」と呼ぶのでした。大工さんたちはほとんど「キョウマ」というと狭い方だと認識します。一般の人達も、建築に詳しい人はそう理解しています。詳しくない人は知らないので聞いてくるのですが、わたしは「広い」と答えますので、ずいぶん信用を失ったことでしょう。現在では、「本来は広い方だが、こっちでは狭い方で使うことが多いです」と答えることができますので、誤解を与えることはなくなりましたが、その渦中では意味がわかりませんでした。

なぜそうなったのか、もっともらしい答えは、つまり「キョウマ」とは「狭間」であり、狭いという意味なのです。あるいは「関東間」のことを「東京間」という言い方をする人がいますので、その「トウキョウマ」がいつのまにか「キョウマ」に変化したのかもしれません。ただし、これはわたしの私見ですので、別の意見もあろうかとおもいます。それでは、ほんとうの広い「京間」は、こっちでは何と呼ぶのでしょうか、こたえは「本間」(ホンマ)です。別にシャレで言っているのではありません。あるいは「本京間」という言い方もします。「本京間」は「京間」の別名で学校でも教わる言葉です。

すっかり話が長くなりましたが,いよいよオチに入ります。3年ほど前、西日の強さに耐えきれず、近くのディスカウントショップにすだれを買いに行きました。さいわい、わたしの住む築35年選手の古屋は、「京間」でできています。古い家は当地域でも広い「京間」のことが多いようです。ちなみに、わたしの設計で10年ほど前に建てた隣家は、敷地のつごうで南北方向は910の「関東間」、東西方向は950の「九州間」という変則モジュ-ルを採用しました。既成のモジュ-ルに縛られる必要はありません。ということで、簾を買ってきたところ、その包装ビニ-ルには「京間」サイズと大書きしてあり、てっきり広い方だろうとおもっていたのですが、実際の簾の寸法は「狭間」の方の寸法でした。これには、さすがにオイオイとなりました。用語の混乱は消費者に不利益をもたらします。できれば、統一した用語にして欲しいものです。

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