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2008年6月17日 (火)

高崎よお前もか

名古屋の恩師から「日経ア-キテクチュア」誌(5/26号 都城市民会館の記事が掲載)を見た、とのハガキが届き、その返事を書いていたら、市内のSさんから「「カ-サ・ブル-タス」にも市民会館が載っていますよ」とのメ-ルがあり、本屋さんに行ってみました。

「カ-サ」7月号は創刊100号を記念して「美術館ベスト100」という特集をしていました。これではなさそうです。その隣に、やはり100号記念とおぼしき増刊号的な+α版が「日本のモダニズム建築100」という特集号になっていて、おそらくこれでしょう。内容を見てみると、DOCOMOMO Japanがこれまでに選定した100+25の近代建築の名品を中心に紹介するもので、もちろん、そこには昨年度のDOCOMOMO新10選に選定された市民会館も載っていますし、後半部の「絶滅建築を救え」のコ-ナ-では、昨年の3月号と今年のやはり3月号で特集された内容が、ほぼそのまま紹介されていました。そこには、見開きで大きく市民会館の外観が登場しますし、東国原知事へのインタビューなどとともに保存にいたったいきさつなどが詳しく記してありました。

ところで、ぱらぱらとその特集号を見ていたら、衝撃の記事にぶつかりました。なんと、群馬県は高崎にある「群馬音楽センタ-」に建て替えの話が出ているというのです。この建物は1961年の建設で、フランク・ロイド・ライトのスタッフとして来日したチェコ出身の建築家 A・レ-モンドの代表作とされる音楽ホ-ルです。ロ-コストを成立させるためのダイナミックな折板構造が特徴であり、客席と舞台が一体化した親しみのある名ホ-ルとして、その名を全国にとどろかせています。DOCOMOMOもまっさきにこの建物をリストに選定しました。また、建設資金を補うために高崎市民の浄財を集めてつくられた理想の公共建築物とも聞いています。そのせいもあり、高崎市民にとても愛されているものであるとも。

「中銀カプセル」、東京と大阪の両「中央郵便局」、「キリンプラザ大阪」などなど、すでに都心部にある名建築のいくつかが絶滅の危機にあり、剥き出しの功利主義を背景とした経済の論理がそれを推し進めています。まさか、「高崎」はそんなことはあるまいと考えていたのですが、記事によると、高崎市では建て替えを含む将来の姿を検討しているとの内容ですが、建築的価値を考えると、建て替えは現実的ではないとのコメントもあり、まだなにも決まっていないというのが現実のところだそうです。しかし、都城の場合も、さいしょはプロジェクトチ-ムが今後の検討をしているそうだというところからはじまりました。いったん解体の方向性が示されたらそれを覆すのは至難ですので、一抹の不安を感じずにはいられません。

昨年7月に都城で開催された近代建築を考えるシンポジウムでもこの建物ことが話題に上がり、紹介されましたが、前述のような経緯もあり、この建物は市民にも愛されているし、まさか壊すことはないでしょうとのコメントに安心していただけに、寝耳に水のことでした。シンポジウムのパネリストのひとりであった建築家の田島氏は、群馬出身ということで、とくにこの建物には愛着を感じているとのコメントをおもいだします。群馬交響楽団はこの建物を本拠としていて、音楽の街、文化の街として高崎を象徴しています。「この建物を壊したら高崎は死ぬ」、あるサイトに載っていたコメントです。そのとおりでしょう。まさか、そんな愚行・蛮行を高崎市と市民が認めるはずがないことを信じますが、「高崎よお前もか」とつぶやいてしまいます。

経済主導による安易な解体・建て替え論に与してはいけません。

1 お金の無駄使い。建て替えより、既存の施設を改修して使いつづける方がはるかに安価であり、財政に貢献します。オペラ施設が必要なら、それに特化した身の丈に合った新たなホ-ルをつくればいいでしょう。総合的な大ホ-ルを現在の仕様で新設すると、おそろしく高いものになります。

2 資源の無駄使い。解体、建て替えは貴重な地球資源の浪費であり、莫大な廃棄物をもたらします。

3 文化の無駄使い。すでに文化財として認定されている貴重な建物を失うことの文化的喪失、高崎のアイデンティティの喪失、記憶と景観の喪失。これらの喪失は金額に換算できませんが、とくに地方都市にとっては致命的です。高崎の将来に重大な禍根をのこすでしょう。

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コメント

モダニズム建築を取り巻く環境は、きびしいの一言に尽きます。建築界は社会の信用を得ていません。
建築を守るのは地元の人たちの熱意しかありません。この建物を残すことが必ず地元のため、日本のためであるという強い信念あるのみです。そうすれば、必ず廻りも動いていきます。

投稿: ブロ長 | 2008年8月 8日 (金) 10時01分

音楽センター建て替えについて調べていて行き着きました。
群馬音楽センターとは非常に密な関係にある家柄に生まれたせいで、この問題には非常に注目し、また、賛成反対両方の立場から客観的にこの問題に取り組んでいるところです。

個人的には大反対なのですが、賛成意見も同じ土俵にあげて考察することによって、より建設的な保存政策が実現するものと考えています。

明日もこの問題について、地元の大学の教授と友人の県議会議員を交えて討論をしてきますが、高崎市の性格からして、音楽センター取り壊しは実現しかねないのではとつい考えてしまいます。

他地域から「あ~あ、やっちゃった・・・」といわれないよう、なんとしても取り壊しを回避したいと思います。

投稿: 高崎市民 | 2008年8月 7日 (木) 02時45分

書きこみありがとうございます。基本的に、行政側はハコモノ建設をしたくなる構造的な要因があるのでしょう。複雑な補助金制度がそれを後押ししていることもあるとおもいます。

投稿: ブロ長 | 2008年6月27日 (金) 15時25分

高崎はレーモンドの井上邸も市民の有志がお金を出して買っているし、行政がとても非協力的というか、何か政治的な対立みたいのがあるのかなぁと勘ぐってしまいます。

投稿: | 2008年6月20日 (金) 15時24分

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