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2008年3月 4日 (火)

都城 島津家墓地

先日、NHKの大河ドラマ「篤姫」で鹿児島県の出水が島津発祥の地であるとの紹介ビデオが流されました。さっそく、それに対して東国原宮崎県知事と長峯都城市長がNHKに反論したことが地元では話題になっています。

3月30日の「篤姫」放送にて、都城が島津発祥の地であることのコメント又はテロップが入ることになったそうです。これも東国原知事効果なのかもしれません。

そもそも、古代律令制の時代、現在の都城地域は島津という地名で呼ばれていました。そして、都城を中心に、日向、大隈、薩摩ににまたがる日本でも有数の荘園があり、島津庄と呼ばれていたのです。薩摩の島津本家の初代となる惟宗忠久は、この島津庄の地頭職に任じられます。そして、この地名をとって島津を名乗りましたが、ほどなくしてこの地を去っていったようです。現在の都城市の郡元町にその居館跡とされる祝吉御所跡が、安久町には堀之内御所跡の石碑が建っています。

片や、出水の方は、戦国の雄として南九州に君臨し、明治維新の立役者ともなり、「篤姫の」舞台である大藩・薩摩藩の地歩を築いたところという意味で、やはり島津発祥の地といえるようです。だから、どちらも発祥の地を名乗る資格があるということなのでしょう。

現在でも都城には都城島津家があります。こちらは本家の分家筋で、もともと北郷(ほんごう)を名乗っていました。1375年に2代北郷義久がこの地に都之城(みやこのしろ)を築き、これが現在の都城の地名のもとになったといわれています。以来、延々と600年以上にわたり、都城の領主としてこの地を治めてきました(1600年前後に数年間だけこの地をはなれたことがあるが)。現在でも28代当主、島津久厚氏が高齢とはいえ健在です。このたび、その居宅である都城島津邸が、都城市によって保存整備されることになったのは、先日このブログに書いたところです。

さて、島津邸の保全は喜ばしいことですが、島津邸以上にわたしが重要な文化財としてたいせつに考えているものが都城にあります。島津墓地です。その名のとおり、都城島津家の先祖累々の墓であり、城跡の南側にある低い丘を利用したかなり広い敷地に無数の石塔・墓標が建っています。その形や大きさ、形式は多彩であり、見ていて飽きることがありません。わたしは、造形的にこの墓地をたかく評価しています。墓地なので狭義の文化財としては法的には難しいのかもしれませんが、その造形、歴史からして本来の意味で1級の文化財であることは疑いのないところです。ちょっと古い写真ですが、以下に紹介しておきます。 

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起伏のある広い敷地に、バラエティに富んだたくさんの石塔が立ち並び、いかにもお殿様らしい格式を感じさせる立派なもの、家来なのか遠縁のものなのか、中くらいのもの、小さなものもたくさんあります。

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上左のものはカニが彫られている。右は千手観音風だが手がいくつか取れている。

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丸に十の字の島津紋章入りの灯篭

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このみごとな彫刻。左のは老松かな?、右は竜が精緻に彫られている。

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右の写真を拡大したもの。内部はくりぬかれ、中にもうひとつの石碑がある二重構造になっている。

ところで、島津邸の購入を決めた都城市は、その整備計画もそこそこに、もう資料館の設計入札を公告しています。あまりに拙速に過ぎるのではないでしょうか。島津邸という当地にとって貴重な文化・歴史資産の整備計画であり、慎重なブランド化戦略を用意してもいいはずです。まして、上物だけそうそうに入札で決定するとは。急を要する事情があるにしろ、これではおざなりものしかできないだろうことを危惧します。まず、叡智をあつめて将来に耐えるしっかりとした整備計画をたてる、あるいは設計コンペにてすぐれ案を募り、その内容を広く市民に公開し、市民を巻き込んでの透明性の高い計画の進め方がベストです。

南九州の風土に適した、都城そして島津にもっともふさわしい施設・整備計画を、この地から新しい文化を発信するくらいの気構えでこの事業にあたって欲しいとおもいます。市の設計公告を見ますと、この入札に参加できるのは、今回の想定規模に匹敵する700㎡以上の、しかも役所の発注する資料館に準ずる施設を設計した実績のある者という条件がついていて、そんなヤツが宮崎県にどれだけいるのか、しかも、わたしのような若くて実績はないが才能のある?建築家は排除するシステムになっています。もともと、都城のアイデンティティにかかわるこの重要な建物の設計を、じゅうぶんな準備時間もないまま、設計料の多寡だけで決定する入札という非文化的な制度を採用することに憤りを覚えますが、この参加条件をみて、ますます落ちこみます。

また、もうひとつの貴重な文化資源である島津墓地の将来にもおもいを寄せて欲しいものです。これだけの墓地を、個人の負担で維持することは、将来的に無理があるような気がします。民間の墓地という性格上、行政が関与できることは限度があるのでしょうが、考えればなにかいい方策があるはずです。

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コメント

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投稿: 韓国 腕時計 スーパーコピー | 2021年7月 9日 (金) 05時01分

カミタクこと神山卓也と申します。

鹿児島の観光と温泉とを紹介する拙HP「温泉天国・鹿児島温泉紹介!」
http://homepage2.nifty.com/kamitaku/kagoonin.htm
内の「NHK大河ドラマ「篤姫」の故郷紹介」
http://homepage2.nifty.com/kamitaku/ATSUHIME.HTM#atsuhime_kengai
から貴記事にリンクを張りましたので、報告します。

今後とも、よろしくお願いいたします。

投稿: カミタク(リンク先は「NHK大河ドラマ「篤姫」の故郷紹介」) | 2008年8月16日 (土) 17時09分

guricoさん、書きこみありがとうございます。
島津墓地はわたしもお気に入りでして、ときに散策させてもらっています。
墓地なので粗末にあつかわれるはずもなく、また、墓地ですのでいろいろな制約もあるだろうとおもいます。
静かに見守っていきたいとおもっていますが、なにか動きがありましたらまた報告します。

投稿: ブロ長 | 2008年4月 8日 (火) 13時44分

はじめまして。母方の実家の墓地のことを検索していて
こちらの記事を発見。
懐かしい写真に、よく一人で西高の帰りに
自転車で立ち寄ったこと思い出しました。
私の小さい時には、本当に公園の様な感じで
母と墓参ついでに、一番上のお殿様の墓地に繋がる
階段の辺りから、都城の市役所方面を眺めて
ピクニック気分で、お弁当を食べたり・・・
一人っ子の私ですが、東京に嫁ぎました。
80を超えた両親は、元気に姫城で暮らしています。
でも、先のことを考えると・・・
この墓地のことを考えると・・・
音楽の仕事をしていて、このお墓は、私の思い出の詰まった
神聖な場所であり、一番上のお殿様の墓地のところには
お参りに行くのです。
どうぞ、守ってくださること、何か遠くにいても
応援したいと思いますから!
よろしくお願い致します。

投稿: gurico | 2008年4月 6日 (日) 23時11分

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